仮想通貨に係る税金についての問題点

Posted by on 2018年9月3日

中野区の会計事務所・税理士の三堀貴信です。「仮想通貨に係る税金についての問題点」について。

仮想通貨(暗号通貨)に係る税金は、雑所得課税されています。(2018年9月現在)
仮想通貨に係る現況の課税状況については若干の疑義を惹起せざるを得ません。
仮想通貨に係る問題点を多角的かつ包括的に限定列挙すると以下のとおりとなります。

①仮想通貨の税率は高すぎる。この課税方式だと大口の投資家・機関投資家が仮想通貨業界に参入してこない。このことにより、日本の仮想通貨産業への参入が遅れる虞れがある。仮想通貨やブロックチェーンなどの技術は今後普及していくことは多くの論者が否定するところではありません。(国によっては仮想通貨に係る税金を非課税にしているところもあるようです)。

②現状、仮想通貨に係る税金は、雑所得課税されているが、これは課税庁の見解であるに過ぎず、これには法的な根拠がない。課税は法律の規定によってのみ行われるべきであることを租税法律主義といいます。これは憲法に定められています。現行の法律に基づかない雑所得課税は租税法律主義に反しており、違法(憲法違反)であると考えます。

③現在は、仮想通貨同士の交換時にも所得を認識して課税されているかと思いますが、少なくともこれは看過できないと考えます。仮想通貨同士を交換しただけで利益を享受したと考えるのはいささかの疑問を惹起します。と申しますのは、この交換時に利益を認識するという考え方は、単に通貨取得時と交換時の同通貨におけるキャピタルゲインを認識したものに過ぎず、その段階では具体的な実益(現実的な経済的利益やサービス等の実現)は得ていないものと思われます。現実的な経済的利益やサービス等は、その通貨を法定通貨に換金またはそれを使用して決済したときに発生するものであり、それまでは未実現の利益であると考えることが相当であると思われます。未実現の利益に課税することは実現主義の原則にも反するものと考えます。
また、仮想通貨同士を交換したとしても、先述した通り、利益は確定したわけではなく、あくまで未実現であることを考慮すると、その後、交換により取得した通貨がどのように値動きするか不明確である点からも、この課税方式には疑義を呈さざるを得ないと思われます。

例えば、所得税は暦年単位で課税されるわけですが、年内に通貨A(所有通貨)と通貨B(交換通貨)を交換した場合にキャピタルゲインを認識することになります。現況この場合において、その所有通貨Aが交換時に値上がりしていれば、一定の方法で計算した金額を利益として課税することになります。
しかしながら、その後において、例えば、年明けに、交換通貨Bの価格が下落トレンドに入ったとして、売却して損失が生じたものとします。その年に提出する確定申告書の税額は前年の所得額に対するものとなります(雑所得の場合、前年に発生した所得と翌年に発生した損失は通算できない)。つまり、申告時に手元にキャッシュが残っていない可能性も考えられます。

また、雑所得に係る損失は繰り越すごとができず、損益通算を行うこともできませんが、内部通算として、雑所得内の損失ならば一定の範囲内で通算することも可能かと思われます。しかしながら、納税資金を確保するために(未来の価格を予想し、申告時における価格下落を懸念して)、年内にあえて損失を確定して内部通算をして課税所得を減らすような行為は、不自然であり、合理性がないと思われます。そもそもこのような通常ありえないような行為を誘発するような課税体系そのものが珍妙であると言わざるを得ません。

また、税額計算の事務の煩雑性を考慮しても、仮想通貨同士をいちいち交換するたびに、キャピタルゲインを認識して課税をされたのでは、税金の計算の事務処理手続き等が煩雑になりすぎることになります。これは 「公平・中立・簡素」を旨とする、税制の3原則に反するものとして看過できない問題であると思われます。

どのような課税方式にするのが適切かどうかは議論の分かれるところではありましょうが、個人が行う取引が、トレード目的ではない場合や営利を目的として継続的に行っているなどの特段の事情がない限りは、少なくとも一律雑所得課税というのは考えにくいかと思われます。

FXとの整合性を考えるならば雑所得課税とするという考え方もあるかと思いますが、性質をそのように考えるならば申告分離課税にするのが妥当ではないでしょうか。
また、株式等と同様にその性質と捉えるならば、譲渡所得課税(申告分離)とするのが相当かと思われます。
この方法のうちいずれを採るのか、折衷法を採るのかは意見の分かれるところかと思われます。昨今話題とされている仮想通貨の証券化問題やETF(上場投資信託等※2018年9月3日現在承認の可否未確定のものを残す)の承認問題などの結果を考慮に入れつつ、課税体系を柔軟かつ合理的に法制化することが期待されます。
いずれにせよ、現況の雑所得とした上で、総合課税をするという課税方式は失当であると思われます。

 

税法はシンプルイズベストですので、簡易な計算になるように税制改正を期待しております。仮想通貨に係る税額の計算方法や所得の認識については、現状、判例等がないので、研究資料に乏しいところではあると思いますが、研究テーマとしては非常に面白い論点ではなかろうかと考えます。

皆さんはいかがお考えでしょうか。(^-^)


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