租税公平主義

Posted by on 2015年10月30日

中野区の税理士(飲食店に強い)の三堀貴信です。「租税公平主義」の意義について。

租税負担は国民の担税力に応じて公平に配分されなくてはならない。また、各種の租税法律関係において各納税義務者は平等に取り扱われるべきである。こうした憲法14条、平等原則の租税関係への適用が租税公平の原則といわれるものです。

租税公平の原則は、その内容としては、税負担の公平を求める、租税負担公平の原則と平等に取り扱うべきことを要請する中立性の原則の2つの原則から構成されています。

<租税負担公平の原則>

租税負担が公平でなくてはならないということは、異論なきところであるとは思いますが、ここで問題となるのが、なにをもって公平というのかということです。

租税というものを国家の提供するサービスに対する対価であると考えるならば、税負担は、各人が受ける利益に応じて負担すべきであることになります。

国家の存在により、受ける利益の多寡により納税義務を負担するのが公平ということになります。

しかし、国家または公共団体の存在はその構成員の福利のためのみに存在していると割り切れるほど、功利的存在ではないと思われます。また、国家などからどれくらい利益を得ているのか、計測することは困難と言わざるを得ないでしょう。

租税は国家がその存在の本質から生じる国民に対する義務だと考えるならば、公平の基準も国家から受けるサービスに対応する必要はないともいえます。

現在、租税は国民の各人の担税力に応じて、負担すべきであると考えられています。担税力に応じて負担すべきだとすると当然、所得の多い者が多くの租税を負担する累進税率は、公平の理念にかなうものであると考えられます。

<中立性の原則>

租税公平の原則のもう一つの内容は課税のうえで同様の状態にあるものは同様に取り扱うべきであると考える、租税中立主義の原則があります。

たとえば、同じ600万円の所得がある者同士の税負担は同じでなければならないことになるのですが、現実社会ではこの判断は困難であることが多いです。

この600万円が事業所得であるならば、すでに収入から必要経費を差し引いた後の金額でありますから、そのまま課税対象になります。一方、これが、給与所得者の収入金額であるならば、ここから給与所得控除額を控除した金額が課税対象となります。

事業所得者の立場からすれば、給与所得には必要経費の証明もなく一定の金額の控除が認められているのは、不公平だと感じるでしょう。一方、給与所得者からしたら、サラリーマンには例外的にしか必要経費(実額経費)が認められていないことが不公平であると主張するでしょう。

租税中立性の原則は、同じものは同じに取り扱う、といった内容とともに、違うものは異なった取り扱いをすべきであるという内容も包含するものであると解されます。

問題なのは、事業所得者の事業所得と、給与所得者の給与所得とが担税力からみて同じなのか否か、異なるとするならば、どこがどのようにどの程度異なるのか、という点を判断しなければ結論はでないのではないでしょうか。

<租税根拠論と税負担の公平>

租税は、なにゆえ、課せられるのか?租税の正当根拠はなにか?という問題は、財政学で古くから論じられていることです。

近代自由主義思想やその社会契約説の考えでは、国家は個々人では提供できない公共的サービスを提供するために存在しているのであるから、そのための費用はその個人が国家から受ける利益に応じて負担すればよいことになります。これをいわゆる利益説または受益説といいます。

この利益説は、国家の歳出のうち、生活保護や老齢年金のような福祉的支出を説明しきれない。また、経済の安定のための景気対策も説明できません。

これに対する義務説または犠牲説といわれる考え方は、歴史的に見ても国家というものは当然に課税権を有しており、国家という団体に所属している国民は国家の公共サービスに要する資金を租税という形式で納付する義務を負っていると考えます。

この考え方からは、各人の負担する租税がその人が受けるべき利益と一致しなくてもよいことになります。租税は負担できる能力に応じるべしと考える立場で、いわゆる、能力説または応能説といわれるものです。

このような立場から考えると、累進税率も容認されることになりましょう。

今日では、税負担は各人の税金を負担する能力(担税力)に応じて配分されるのが公平にかなうと解されています。

<担税力>

担税力とは、租税を負担する者が不当な苦痛を感じることなく、社会的に是認できる範囲で租税を支払える能力のことを言います。

能力説、応能説では、税負担は担税力に応じて配分されるのが公平であるとされていますが、この担税力という概念は、社会的、政治的あるいは倫理的な概念であり、統計や数値的に確定できるものではありません。

人の担税力を示すものとしては、一般的には、消費、所得、財産が挙げられます。

<累進性・逆進性>

課税標準が大きくなるにつれて、適用される税率も高くなり、税負担の割合が増加するような租税の構造を累進性といいます。反対に、限界税率が下がるような構造を逆進性といいます。

<累進税率と租税公平の原則>

個人の所得課税は世界的にみても累進税率が採用されているところが多いようです。これは所得が大きくなるにつれて、生活必需品に充てなくてもすむ自由所得の割合が増加するからと考えるからであります。換言すれば、所得が大きくなれば、新たにもたらされる所得のありがたみ、つまり所得の限界効用は低くなると考えられるからです。
そこで、所得税の累進税率構造は担税力に応じた公平な租税であるといえるでしょう。

また、憲法が予定している社会福祉国家、社会国家のためには、富の再分配が不可避であって、この点からも累進税率は容認されていると解することができます。

<源泉徴収制度と租税公平の原則>

給与所得者は給与支給に際して、所得税を源泉徴収されています。このことは事業所得者と比べて不合理な差別であると争われたことがありますが、最高裁は源泉徴収制度の必要性から、公平の原則に反する不合理な差別とまではいえないと判示しました。

<事業税と租税公平の原則>

給与所得者とは異なり、事業者は住民税のほか、事業税が課税されています。これについて最高裁は、事業者はその事業の経営につき種々の便益を地方団体から受けているから、事業税の課税は租税公平の原則に反しないとしています。

<ゴルフ場利用税と租税公平の原則>

ほかのスポーツと異なり、ゴルフ場の利用についてのみゴルフ場利用税が課せられていますが、広い敷地を要するゴルフ場が、その地方団体から受けている便益は他のスポーツ施設とは異なると考えられ、また、ゴルフプレイヤーは、他のスポーツ愛好家よりも高い担税力を持っていると考えても不当ではないだろうから、公平に反するものではないと解されています。


 

※免責事項
当事務所の「税務会計ニュース」及び「お役立ち情報」等で提供している各種ニュース及び各種情報等につきましては、お客さまに不測の損害・不利益などが発生しないよう適切に努力し、最新かつ正確な情報を掲載するよう注意を払っておりますが、その内容の完全性、正確性、有用性などについて保証をするものではありません。
したがいまして当事務所は、お客さまが当事務所のホームページの税務会計ニュース及びお役立ち情報等に基づいて起こされた行動等によって生じた損害・不利益などに対していかなる責任も一切負いませんことを予めご了承ください。
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
※本情報の転載および複製等を禁じます。

 

 

このエントリーをはてなブックマークに追加