電子申告の義務化について
中野区の会計事務所・税理士の三堀貴信です。「電子申告の義務化について」。
国税庁のHPによれば、「平成30年度税制改正により、「電子情報処理組織による申告の特例」が創設され、一定の法人が行う法人税等の申告は、
電子情報処理組織(以下「e-Tax」といいます。)により提出しなければならないこととされました」とのことです。
一定の法人とはいわゆる大法人を指すものと思われますが、この電子申告化の波は中小企業等にも及びそうな印象を持ちます。
法人には原則として納税義務があり、それは法律(法人税法4条)に規定されています。これは憲法30条(納税の義務)に照らして合理性を有していると考えられます。
しかしながら、納税義務は規定されているものの、電子申告の義務は規定されていません。
申告はなにも電子申告でする必要はなく、紙で申告しても当然問題ないものとされています。
今回の改正は、課税庁側の事務処理上の問題で、いうなれば課税庁側の都合で強制するものであると思われます。
仮に法律に規定したとしても、その趣旨及び根拠として説得力のあるものではないと考えます。
電子申告を行うには少なからずパソコンなどのITを使用することのなります。納税者のすべてがITに精通しているわけではなく、
パソコンなどの操作が苦手な方も少なくなかろうかと思われます。
そのよな状況を鑑みるに、電子申告を強制することは、たとえ法律で規定したからといっても、権力の乱用ということができるのではないでしょうか。
今回の改正は、まずは比較的文句が出てきなさそうな大法人から適用し、既成事実を作った後で、いずれは中小企業等にも適用させることが
根底にあるのが明らかなように思われます。
中小企業等に電子申告を強制することには否定的にならざるを得ません。換言すれば、法律自体が極めて利己的なものであり、
納税者の権利の保護の観点から違法性を有するといえるのではないでしょうか。
以上、法人の電子申告の強制化について触れてきましたが、実はこのことは個人事業者にとっても無関係のことではないといえます。
個人事業者については、一定の要件を満たせば、事業所得や不動産所得等の金額の計算上、65万円の控除(青色申告特別控除)が認められていました。
これが今回の改正によって、55万円に引き下げられることになりました。これについては、電子申告をする等の一定の要件を満たせば、65万円にするという
ことになっております。これは明らかに個人事業者にも電子申告を選択させようとする意図が見えるのではないでしょうか。
今回の改正により、基礎控除額が従前の38万円から48万円に引き上げられることになりましたが、このことと事業所得等の金額の計算上控除する青色申告特別控除とは牽連性を認めることはできないと考えられます。(そもそも基礎控除額を引き上げる合理的な根拠も不明確ではありますが)。
申告の形態は電子申告で行うのも、紙媒体で行うのも自由であるべきだし、国家権力たる課税庁がそれを強制することは、いかに法律で規定したからといって許されるものではなく、
自己の事務処理上の効率化のみを求めたものであり、納税者の権利の保護(自由な申告形態の享受)の観点からも妥当性を欠くものといえるのではないでしょうか。
みなさんはいかがお考えでしょうか。(^-^)
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