電子申告の義務化について2
中野区の会計事務所・税理士の三堀貴信です。「電子申告の義務化について2」
所得税の確定申告において、2020年から、電子申告で申告を行わないと青色申告特別控除65万円の全額控除を受けることができないようになりました。
具体的には、電子申告をしない場合は青色申告特別控除額は55万円ということになります。
今までは、青色申告の承認を受けた場合は、その申告形態にかかわらず、青色申告特別控除の全額、すなわち、65万円の控除を受けることができたのですが、
2020年からは、無条件で受けることはできず、電子申告がその要件となるようです。
当ブログでも述べていることですが、申告の形態というのはあくまで任意であり、法律によって強制されるものべきものではありません。
しかしながら、今回の改正により、簡単に言うならば、電子申告をしないと65万円の青色申告特別控除を認めない(減額する)ということになりました。
改正前は65万円の控除を全額受けることができたわけですが、改正後の原則55万円の控除、電子申告を行うと控除額を10万円アップしてあげる、65万円にしてあげる、というのは極めておかしな話だと思います。
今回の改正はおそらく、電子申告の普及をより促進するために行われたものと考えられますが、電子申告を普及させる目的で青色申告特別控除額を減額するなどありえないと考えます。
100歩譲って、普及させるためのインセンティブとして当該金額を変更するなら、変更前の65万円をベースとして、電子申告をしたら75万円などにするのが合理的なのではないでしょうか。
なぜ、ベースを減額させるのか。そこに合理性はみえません。(まぁ、そもそもインセンティブのために控除額を変動させることが合理性を有しないのですが)。
また、税制改正により、基礎控除額が変更になりましたが、このことは、先の青色申告特別控除額の金額を変更したことに対する正当性を担保するものとはならないと考えます。
基礎控除額はあくまで憲法に基づく生存権の保証としての性格を有するため、青色申告特別控除とは性質を異にしています。敷衍するならば、基礎控除額と青色申告特別控除とは分けて考えるべきものであり、当該制度を関連付けることはナンセンスといえます。
国民には憲法に規定する納税の義務はありますが、申告形態や納付形態まで義務付けるものではありません。
今回の改正のように、控除制度などをインセンティブとして、電子申告を誘引する行為は、行われてはならないものと考えます。
早急に今回の税制改正に基づく当該制度を廃止し、もとの制度に戻すことを期待しています。
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